亀の甲羅/なかがわひろか
使い古された男のそれのような
亀頭をそっと覗かせて
疑心暗鬼に世を憂う
お前が生きて最早万年
そろそろ敵も絶えた頃
お前の甲羅も外したらどうだ
重かろうに
窮屈だろうに
こそこそするのにも
疲れたろうに
お前の甲羅をそっとはがす
お前は自由
拘束されない
自由な意志を持つ
お前は動かない
ぴくりとも動かない
私は本当は知っている
お前は重かろうが
窮屈だろうが
疲れようが
いつまでもこそこそ隠れて生きていたいと
思っていることを
日の当たる場所で
お前は自分をさらけ出すのが
怖くて怖くて仕方ないことを
本当は私は知っていた
お前の甲羅はもう割ってやった
お前が隠れる場所はもうない
逃げ場のないお前
なあ
どこへ行く
(「亀の甲羅」)
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