羅針盤は故郷を知らない/たりぽん(大理 奔)
道の先をいつしか
岬と呼ぶのでしょうと
白い幾万もの手が
砕けては戻っていく
届かない場所に
北端という称号を与えて
みんな満足して
羅針盤の声を人は夢に見るのです
根無し草のわたしには故郷がない
土地にしがみつかずにながらえて
いつしか還る土にあこがれた
冬空が重く、波頭が白く
ギラリと刃物
胸を刺すね
死んでいきたいね、静かに
あなたが最期まで住む
この街を故郷と小さな声で
つぶやきながら
そこはいちばん北に近い
と思いこんでいる場所
北というのは
羅針盤のことばだから
そこにむかうことはできても
たどり着けない
だから焼かないで
還りたい、
故郷にしてと耳元であなたがささやいた
岬のあるどんづまりの街に
遠鳴りは
砕けて
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