結婚指輪/砂木
似合うと
どこか愛想笑いを慌ててした彼が
指輪を決めた
記念日やイニシャルなどの彫りを頼んで
とりつくろうように店をでたが
当然 帰りの車の中で喧嘩になった
嫌なら最初からやめればいいじゃないか
悔しくて ひたすら惨めだった
しかし結婚してから
喧嘩して 指輪をはずして
投げつけたのは 私の方だった
くだらないけんか
でも何度となく
けど わかりやすい所に
指輪を投げて
私は夫の いいなりになどならなかった
でも落ち着くと 自分で指輪をはめるのは嫌で
指をつきだしては 夫に はめさせた
あれはまだ 二十代の新婚の頃
二人でいて譲り合えない
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