世界から帰る/草野春心
 


  ちょっとした梅酒に缶焼酎
  ちょっとした高揚感
  こんな具合を ちょっとした幸福と呼べるなら
  ちょっとしたお調子者



  だが今
  厚ぼったいかなしみだけが
  言葉以外のあらゆる姿で
  ぼくの言葉を圧迫している



  記号は底の落ちた漁船
  構わず人は意味の魚をもとめ……
  それは間抜けな光景ですらある
  と書いたことには多分に自嘲も含んでいるが



  そろそろ気付いていい頃だろう
  世界には0しか無いことに
  言葉へと歩む忙しい毎日は
  ひとしく世界から帰ってゆく旅路だということに


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