空想夜/はじめ
夜に音楽を聴くと
とても感慨深くなる
どこかからしんみりとした風が胸の中へ入ってきて
僕は生きているという実感を持つことができる
夜の旅
時計の針の音に乗って
色々なことを空想する
詩の種になることもあるし
小説の種になることもある
音楽を聴いていると
なんだか世界が僕の部屋一つしかないような錯覚に陥る
心の重さが基準値まで戻るような気分だ
空想世界の昔の話が脳裏に浮かんでくる
戦争中の国で攻撃を受けて崩れ落ちた住宅街を母親と娘が逃げ惑っている
高度文明社会のその世界では車が宙に浮いて空を飛んでいる
人間は十九歳になると前世からの因縁で
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