雲ノ中デ /望月 ゆき
 
目の前に棒があったので
それにつかまりながら
ぐんぐんと高いところまでのぼっていったら
ぼくは 雲の上に立っていた
正確には 
雲の中といえるかもしれない


なにしろ 
上を見ても雲
左右をきょろきょろしても雲
下を見ても雲であった


しかしそこは奇妙に心地よく
さっき 
靴を片方なくしてしまったことも
すっかり忘れてしまえた


それにしても
雲の中においては地面が雲なのだから
いつも見ている空の上の雲というものは
存在しないのだろうか。


などと 
たあいもないことを考えてるうちに
すっかり日も暮れた


一緒に遊んでいた仲間はいなくなっていて
ぼくはひとり 
ジャングルジムのてっぺんに座っていた


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