語ってしまった後で/及川三貴
物語を聞いてしまうと
彼女は不満げに頬を膨らませた
小さな手がタオルケットの端を
強く握っているのが見えた
硬く白くなって
欲しいものを手に入れられない嫉妬に
震えている
だから
私は続きを話したのだ
それがあんまりにも繊細で
壊れてしまいそうなものだと
思ったから
おまえよく聞きなさい
進めば帰る事が出来ないお話
聞けば引き受けるしかない先
きっと恐がると思って始めはゆっくりと
語るうちに語ることに魅入られてもっと
北の国では
首の無い鳥が沖から飛んでくるというよ
月に閉じ込められた子供がいるよ
彼女の眼の影はかすかな怯えの色
そうして口が滑るままその先を話せば
いつか私がタオルケットの端を
強く握っていることに気付く
もうその頃には私以外の眠った
いきものたちが夢の中
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