song/三架月 眞名子
親の顔なんか記憶にない
物心ついた時からこの
薄暗い施設で育てられて
周りの子たちとも全く馴染まず
一言も口を開かないまま育った
だから自分の声がどんなものか知らない
泣き方だって知らない
叫びだしたくなることもない
笑うってどんなものなのか興味すら持てない
でも、唯一つ
一つだけ…
古ぼけたラジオから流れてくる
取り留めのない曲を
ただぼーっと聴いているのが大好きで
何を歌っているのかわからないけど
すべてが鮮やかに色づいていて
そこには自由があって
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