蝶/weed & sky
トンネルを抜けて
見上げた空を
鳥が渡っていく
白い鳥と黒い鳥
それぞれが
カギのように列を組み
重なり合いながら
私の頭の上を
過ぎていく
何人もの人が
立ち止まり
空を見上げている
何かが降りてくるのを
待っているみたいに
向き直った私に
吹いてくる風
風に乗り
木の葉が舞っている
それは木の葉ではなく
いくつもの蝶
逃げるでもなく
伸ばした私の手の先に
近づいてくる
掌ほどもある羽の
青と紫の光る模様
細い体を包みこむ
柔らかな綿毛
私の手の中の
儚い命
傷つけないように
祈るように
心に流れ込んでくる
もっと深いどこかから
わきあがってくる音楽
手を伸ばし
蝶を空に放す
あたたかな何かに
満たされていく
解き放たれたのは
蝶ではなく
私自身なのだと思う
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