「 曖昧なわたし。 」/
PULL.
時間の感覚も曖昧になった。
彼は立ち止まり、
わたしを見ていた。
力なく首を振り、
暗い溜息をひとつ残すと、
彼は流れの中に戻っていった。
二度と振り返らなかった。
暗い溜息は流れ乗り、
わたしの中で少し留まり、
やがて消えた。
曖昧でないものたちの流れは、
いよいよ急になり、
ごうごうと音を立てて、
わたしを通り過ぎてゆく。
水嵩が増した。
溺れてゆく。
そう、
曖昧に想った。
了。
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