「 曖昧なわたし。 」/PULL.
気が付くと、
また曖昧なものになっていた。
前回はあいまいで、
その前はアイマイだった。
…ような気がする。
これもまた曖昧である。
曖昧なものになったわたしの上や横を、
曖昧でないものたちが通り過ぎる。
彼らはみな忙しそうに、
せかせかと手足を動かし、
わたしの周りを水のように通り過ぎてゆく。
わたしは曖昧な岩のように、
いつまでもそこに立っている。
ひとり、
曖昧でないものが、
わたしの中を通り過ぎていった。
彼はわたしを通り過ぎた後、
ふと立ち止まり、
振り返った。
ほんの数秒、
いや数時間かもしれない。
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