白い花が飛んでいく/霜天
 
4月の空は霞んだ青
地面に張り付く僕等の上を
紋白蝶がひらひらと
縫い合わせていく

南向きの窓から
緑の塊に見える林の向こう
隠れるようにキャベツ畑があって
近づくと白い花びらが
空へ向かって散っていく

白い花が咲いてるよ
白い花が飛んでくよ
そう口にしたのは何時だったろう

なんでもないふうを装って
日常の気まぐれの速度で追いかけてみたけれど
空を縫い合わせながらも
やっぱり白い花はひらひらと速いままで
どこまでも追いつかない
地面に張り付いた足が重いからだ きっと


そういえば
身軽だったあの頃も
蝶を捕まえるのは苦手だった
まだ地面に足は張り付いてなかったはずなのに


白い花が飛んでいく
僕にはつかめないほどに 高く
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