手を握る/
たもつ
踏み切りで電車がすれ違った
「電車と電車がおおまちがいだよ」
坊やは言った
大間違いするわけにもいかないので
電車は最後尾が離れる瞬間
少し間違えてみせた
「あら、間違えちゃったみたいね」
そう言って母親は
坊やの手を握り直した
春の陽射しみたいに
何処かに行ってしまわぬように
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