春の土手/はじめ
 
た時の痛みが僕の心に突き刺さって雪は激しく降っている
 激しい恋に雪はさらに激しさを増すだろう

 春の土手では歳を取らない少年が寝ころんで草笛を吹いている
 少年は学生帽を被っている
 自転車に乗った女子学生が少年の傍を通り過ぎる
 小川が清らかに流れ 笹舟が流れてくる
 時間は柔らかく流れているが流れていない 
 日の光が明るい色で少年の肌を照らしている
 蛙が鳴いている 顎を膨らませたり縮ませたりして少年の様子を覗っている
 少年は草笛を吹くのを止めて腕を頭に組んで寝転がっている

 少年は僕の心の中で温もりを持っている
 僕の分身だ
 少年は内側から僕と向かい合って見つめている
 少年はやがて暗い闇の中に収められるだろう
 そして僕の心はもっと温度が高くなっていき
 心地良い体温になった時に
 僕の風景は一旦姿を消すだろう
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