壊れていく風景/北野つづみ
影が長くなった
昨日よりも 今日
罪を引きずっている午後
奇妙に明るい空
雲が
凄い速さで流れていく
地上には少しの
風しかないのに
手の届かないところで
ぐんぐん形を変えて
止められない速さで
壊れていく
佇んでいるのは
一本の街路樹
どこへもいけない現在に
ため息を散らす
遠くから踏切の警告音
梢の上をかすめて
空に溶けていく
影が長くなる
今日よりも あした
のびていくだろう
傾いていくだろう
手の届くところではゆっくりと
けれども止められない形で
壊れるだろう
二〇〇六年十二月十五日
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