虹/水在らあらあ
死んだ鯔が漂っている
ゆらゆら ひれをふりながら
近づいてくる 油の浮いた港の水を分けて
俺の思い出を裂いて
一漕ぎで 鯔はあきらめる
記憶の追跡を 死というやわらかな退廃を
この心にもたらすのを
二漕ぎで 鯔はあざ笑う
記憶の堆積を 生というゆるやかな腐敗を
あざ笑いながら 波間に消える
三漕ぎで 空が襲いかかる
俺達は吠える
なだれのように襲いかかる青空の青を
俺達は吠えて迎える
四漕ぎで 風が鳴きはじめる
俺達は笑う 全身で笑う
笑い声はカモメを狂わせ
ウミスズメを午睡から呼び起こす
五漕ぎ 六漕ぎ 七漕ぎ 八漕ぎ 九漕ぎ
十
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