笑うことを躊躇しないきみ/望月 ゆき
笑うことを躊躇しないきみを
ぼくは いつも羨ましく見ている
ぼくは ふと気づいたときには
バカ笑いってやつが できなくなっていた
とはいえ
昔はしていたのか、って言うと
それすら思い出せない
ぼくの母親は
ぼくがパジャマのボタンを
自分でかけられるようになった頃には
もう すでに笑わない人になっていた
時々 ボタンをかけちがえたって
見てやしなかった
ぼくはずっと 笑い方がわからなかった
教えてくれる人がいなかった
笑うことを忘れて過ごしてきた
忘れてるフリをしていたのかもしれない
あの時までは
きみが
つくしんぼ って名前が面白いって
突然笑い転げた あの時までは
ぼくは
笑うことを躊躇しないきみを
いつも 微笑ましく見ている
笑うことを躊躇しないきみの 隣で
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