湾岸経由蜜柑畑行き/岡部淳太郎
かの靴裏にべったりと
はりつくのを夢見て
おそろしい年月が経った
か細い声で
ちるりり ちるりり
鳴かなければならないのは
私という泥の方かもしれない
年老いた者や働き盛りの者たちは
自分たちのひそかな楽しみを悟られないように
いつもどおり家計に頭を悩ませて
ゆるゆると歩いている
そんなふりをしている
そんな彼等の頭の上でも海鳥は
か細く
ちるりり ちるりり
老いも若きも みな
そうやって淋しげに鳴いている
こうして歩いて
遠くに海を見ながら
自分の言うことに
規制をかけるべきではないかと 思う
私はあまりにも私でありすぎた
だからこそいまもかつても
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