「 つめたい家。 」/PULL.
 






妻が子を産んだ。
女の子である。
わたしの子ではない。
山神さまの子だと妻は言う。
山神さまの子は妻に似て、
肌が白い。
むずかると、
白い肌を紅くして泣き叫ぶ。
そんな姿も妻に似ている。




冷たい家の中では、
その泣き声は、
よく響く。
ひびく。




おしめを替える。
山神さまの子はじっとわたしを見ている。
おしめは完全に凍る前に替えなければならない。
わたしは手慣れている。
熱湯に浸した手でおしめを熔かし、
凍って張り付いた尻から、
ゆっくり剥がす。
汚物はやわらかい布か、
それがなければ舌で舐
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