許すという事/野薔薇
 
前の助けなしで
一人で生活した方がましだ
そう言って彼はベットにまた横になった

ふと外に目をやると
一匹の熊が庭を横切っていった
またあの熊が来ているよ
そう言うと
そうかと彼は嬉しそうな声で言った
そして
最近見ないので
少し心配だったんだ
と付け加えた

あの熊があなたを傷つけたのに
と言う言葉が喉まで出かけたが
まるで久しぶりに孫に会えて喜ぶ
おじいちゃんの様な優しい目で
窓の方を見る彼を見たら
言えなかった
そうしてもう一度熊に視線を戻した私は
彼の言いたかった事が
少し理解できた気がした

久しぶりに笑顔が私の顔に戻ってきた
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