三日月/はじめ
夜になると
緑色に輝く布に僕は立ち上がりながら包まれ
凍った吐息を漏らす
指の爪が長く伸びて尖って
僕は白い吐息を何度も吐く
夜を駈けたいと思う
地上に落ちた三日月を横目で見て 僕は屋根屋根を越えていく
部屋の中で見た銀河を思い出す
胸に白い粒が突き刺さる 僕はパニックになる
屋根の上に腰を下ろし
墜落した巨大な三日月の撤去作業を見ている
僕のマフラーは揺れている
トラックやクレーン車が月の欠片を積みワイヤーで引っ張っていく
僕は深呼吸をした そして月の破片を吸い込んでしまった
今は冷たい僕の部屋
僕が小鳥になった
胸が開け
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