虚空に繁る木の歌 デッサン/
前田ふむふむ
ぬ勢いを増して、
読経の声がもえだしている。
凍る古い運河の記憶がよぎる。逝った父は昏々と眠っている。
蒼白い炎が、門を包む。
その熱によって、
わたしの血管の彼方に滲みこんでいる春の香かに、
きつい葬列のような月が、またひとつ、浮ぶのだ。
わたしの溢れる瞳孔をとおして、
音もなく、復員はつづいている。
闇のなかに遠ざかる感傷の声が、
書架の狭間で俯瞰する鳥の声が、
沈黙してゆく門をみつめて。
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