真夜中ビスケット/虹村 凌
 
ポケットの中で粉々に砕け散ったビスケットを
乾燥した指で摘んで口に運んだ
解けたチョコチップが指に絡んで
煙草のフィルターまでベトベトになった

お前がくれたチョコチップビスケット
これで最後の一枚だよ
あとはポケットの中で粉々になって
煙草の葉っぱカスと一緒に捨てられるだけ

冷たい缶珈琲で一気に流し込んで
さぁ
お前の事なんぞすっかり忘れよう
新しい物語を探しに街に出よう
寝苦しい夜
だから
だから街に出かけよう
一番上等な服を着て
磨きたての靴を履いて
大好きな歌を口ずさんで

「そいつが輝く時はいつも
俺を不安にさせるんだ」

手軽な物語も
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