ヘクサ/及川三貴
 
閉じた瞼の下側でかすかな
痙攣
精錬された鋼の穂先
朝焼けに震え
号を待ち 轟く音声
倒された無力な草木 精気の
抜けた手の中に在る
日の力 強く握られた
可憐 刃先を業より外して
はや幾世紀 円周の
外で燃える街々 高貴な火の力


疲弊した息
数えつくせぬ矢羽根の草原
薄明までの数刻の静寂
東夷達が時を待っている


凍える刃の中に留まる
音 高く 心を弾く
草原に駆けた跡から
なびく砂煙
丘に埋もれた旗を越えて


器に盛られた石
喉を潰す 黄色の帯
肌よりも濃い


視線で封した
輝く抜き身
嵩ます夕霧の心に
届く囃子
踊る袖から響くのは
生者の嘆き
筆より溢れた
幾編の金色


土に還った骨が
この足を空に
離そうとしている
踏み締められた
肉さえ忘れて


戻る   Point(3)