駅・上野 (79/07)/たりぽん(大理 奔)
カップ酒飲みながら描かれる似顔絵を横目に
不忍池にむかって階段を下りる
もう大阪焼きの屋台はなくて
飛べなくなったオオワシが
うずくまって水面を見つめている
上野には
飛ぶ空がないのだと
羽根を広げることもなく
目を閉じて耳を澄ます
野生の声は聞こえない
長距離列車の到着を告げる声が聞こえる
冬の空気が運ばれてくる
耳を澄まして、かたく目を閉じる
声は聞こえない
飛べなくなったオオワシが
うずくまって
飛ぶ空を深く沈めてしまう
水面を見つめている
羽根を広げることもなく
時間の許す限り
遠回りして
思い出は
ビブラホンのように叩いて
ポケットから
いつ入れたのかも忘れた
ハンカチを取り出して
今日の行き先は決めた
もう、
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