ひとつ 深く/木立 悟
 



雪が
裏側の碧を見せぬまま
降りつづけ
積もりつづけている


光が夜を昇る声
水を斜めに振り向かせる声
器のかたちに流れ去り
ふたたび器に満ちてゆく声


世界を横に引く音がして
何かが見えたはずなのに
さらに横に引く音がして
何かは見えなくなってしまう


まさぐるたびに
沈む水音
触れたことさえ
忘れる碧


ずっとそばにいた見えないものが
どこかへ去ってしまったのを知る
いくつかの景がひとつになるとき
火が生まれたままの姿になるとき


小さな光の指を詠み
小さな光ははしゃいでいる
遅れて到く祭たちの声
過重の夢のあかしの碧


高く積まれた灯が立ちならび
ひとつひとつが闇へ近づく
世界の扉にたたずむ碧
はざまに声を吹きこんでゆく














戻る   Point(5)