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太郎冠者
思い出す
ロンドンの路上に描かれた
誰も訪れたことのない大聖堂
クレヨンのドアを開ければ
鳴った1ポンドの音
思い出す
場末の映画館を探して
路地を何度も曲がり続け
が、結局たどり着けず
そのまま眠ってしまった男
思い出す
そう、それは俺の記憶ではなかった
ましてお前のものでもない
コンクリートが
浮浪した猫が
跳ねたボールが
垣間見た
一瞬
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