こどんのかげ/ねなぎ
その場所に汽車が走っていたのは
私の思い違いでは無く
私は
父を思い出す
そして
その場所に
再び
足を向けた時に
潮の匂いに塞がれていた
鉄パイプで組まれた足場の上には
数々の色のペンキが散りばめられていて
ワイヤーを降りて遊ぶ事は
本当は止められていたが
私には
その意味も解らずにハンガーを壊した物で
滑る事くらいしか
する事が残されていないのだった
打ち合わせの話など
大人の会話が解る程に
子供では無く
図面等とは無縁だった
その斜面に囲まれた
温泉場では
観光地化の為に
ホテルが乱立したが
地盤や立地の悪さから
工事は難航
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