「appetite」/和 路流(Nago Mitill)
そこにあるものが、美味しいのであれば
あなたは今、幸福なのです。
腹を満たすためだけでなく、
心を満たすために、人は食事をするのです。
懐かしい人たちと囲んだ、美味しい記憶のにおいが、
温かくやわらかいスープへと、私をいざないます。
顔がある人間が作った料理を、だから私は食べたいのです。
時に他者を傷つけ、あるいは殺すことさえもする人間の手が、
人間のために作る料理を、味わいたいのです。
そして、この胸にある記憶を、あなたと分かち合うために
私は料理を作り、満腹するのです。
そこにあるものが、美味しいのであれば
あなたは今、幸福なのです。
腹を満たすためだけでなく、
心を満たすために、人は食事をするのです。
生きるために、あなたは今、ものを食べるのです。
(2006年・筆)
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