ぼくたちの儀式/望月 ゆき
夕暮れになると海に行く
夕暮れ時の海は
まだかろうじて
空にひっかかっている太陽に照らされ
遠くをゆく船も
その意思を無視され
逆光に姿を消す
夕暮れ時の海は
ひっきりなしにどこからか
オレンヂジュースが大量に流れ込んでいる
それだけはたしかだ
太陽の力が尽きて
空から落っこちてしまうと
イカやタコがいっせいに
やっきになって墨を吐き出す
そのおかげで海にも夜が来る
海が 墨で真っ黒に染まるのを待って
ぼくたちは家路につく
朝はどうやって訪れるんだっけ
なんて話をしながら
ぼくたちの毎日の
ぼくたちの儀式
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