ぼくたちの儀式/望月 ゆき
 
夕暮れになると海に行く


夕暮れ時の海は
まだかろうじて
空にひっかかっている太陽に照らされ
遠くをゆく船も 
その意思を無視され 
逆光に姿を消す


夕暮れ時の海は 
ひっきりなしにどこからか
オレンヂジュースが大量に流れ込んでいる
それだけはたしかだ


太陽の力が尽きて
空から落っこちてしまうと
イカやタコがいっせいに
やっきになって墨を吐き出す
そのおかげで海にも夜が来る


海が 墨で真っ黒に染まるのを待って
ぼくたちは家路につく
朝はどうやって訪れるんだっけ
なんて話をしながら


ぼくたちの毎日の
ぼくたちの儀式

戻る   Point(4)