毒林檎をかじるように/水瀬悠季
なんとなくついたため息に意味はない
君が昨日くれた手袋を早速し忘れたのは多分そんなに寒くなかったから
手をつなぎたくないのは単にそういうのが好きじゃないだけ
簡単には笑わないのは愛想笑いが失礼だと知ってるから
見上げた空が曇ってたからって落ち込んだりしない
今日気分がよくないのはたまたまそういう日だっただけ
あたしは平気だと何度でも繰り返す
大丈夫
一人で立っていることは悲しいことじゃない
欲しいものは偽物じゃないってわかってる
いなくなるってわかってるなら、あたしから先に言えばいい
どうせなら極上の微笑みで
だから、君はいらない
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