義眼の彼岸花/蒸発王
 
んな事を繰り返すうちに
庭は彼岸花いっぱいに埋め尽くされ
お客は増えて
何時の間にか回りから
義眼屋とよばれるようになった

義眼を買った皆は銭を置いて
お礼を言っていく

其の言葉に浮つく眼球を押さえながら
赤い夢に悩まされる


お代なんていらないのだ

ただ私の目から幸福を掻き出して欲しい

残さず出ていってくれたら

私はもう何も見ることもなく

夢さえも見ることもなく

暗い眠りに墜落していける





ああほら


今夜もまた


血の匂い


彼岸花の夢を見る










『義眼の彼岸花』



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