義眼の彼岸花/蒸発王
 
恥ずかしいことに
世界がこんなに醜いなんて知ったのは
長いこと生きてからで
そんなことも感じず
のうのうと
幸福で腹を満たし
偽善で呼吸し
精錬潔白を詠っていた

自分が
一番醜いのだ
そう思った時


もう何も見たくなくなって
両目を突き刺した



『義眼の彼岸花』


だくだくと
血の涙が流れ
鉄錆びた匂いを味わったが
痛みの価値なんぞ無かった
半壊した眼球が目蓋の下で暴れ
滴った血は庭先にしみ込んだ

気持ち良かった


其の後
脳天は熱くなって
沈み込むように
私は眠った
暗闇に浮ぶ
鮮明な赤色の夢を見ながら

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