指、記憶、形/
たもつ
頁をめくる指に
降る水がある
温度とそうでないものとが混在し
それは仄かな懐かしさで
やがて積もっていく
一月の末日
漢方の匂いが漂う診療所の待合室
あなたはまだ誰にも知られていない
かのようにたたずんでいた
窓の外、コンクリートの建物の側で
旗が風にはためいている
どこかの国旗だったはずだ
という記憶だけで
あなたがあなたの形をしている
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