今朝の革命/なかがわひろか
パパは今朝の革命に失敗して
その日の夜から
帰って来なくなった
そして僕はパパのいない毎日を生きて
いつしかパパと同じ年になった
パパの遣り残した革命は
とてもちんけなもので
何者も転覆させるようなもんじゃなかったけど
そしてあまりにもくだらなかったけど
心残りだろうと思って
僕は代わりに挑戦した
僕は今朝の革命に挑戦して
そして、失敗した
パパが消えた理由が分かった気がした
僕らは大切で
ちっぽけな
今朝の革命に失敗した
哀れな親子だった
そんな僕を息子は見つめる
僕は彼に優しくつぶやく
「そのうち君にも分かるさ」
その夜から
僕は帰って来なくなった
子は親によく似る
(「今朝の革命」)
戻る 編 削 Point(1)