かえりみち/ねなぎ
ベトベトにしていた脇を
懐かしむでも無く
歩いて
家に入れては貰えずに
服のまま
流れに身を任して
洗っていた
川を見下ろし
橋を渡り慣れたままの歩み
体を投げ出して
日に晒し
服を乾かしていたら
自転車にベルを鳴らされた
その家の前の
アスファルトの遊歩道で
私は立ち止まって
今は
もう取り壊されたはずの
平屋建ての
トタン屋根を眺めれば
消えかけの赤さが
目に刺さり
多分
祖母は汚れたままでは
土間にも上げてくれないだろう
宵闇に気温が下がって
冷たくなる体を
アスファルトの匂いで
暖めながら
私には
それが解っていて
手紙を持ったまま
家に辿り着かないでいる
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