かえりみち/ねなぎ
郵便受けに
故郷からの便りが
届いていたので
返信を認めて
ポストに投函しに
夕暮れの街に
足を向けた時には
五時の鐘の音を
久しぶりに聞いていた
その独特の匂いに
包まれるように
赤さを探して
私は
街の空の
燃えるような色に
目を逸らせずにいた
気を取られて
濡れ羽色のような
静けさに
道を間違えたのか
私は
二度と帰る事の出来ない
我が家へと
辿っているのに
それが当然のような
いつもの道
木々が茂り
昼でも暗い
小道の脇に
一本だけ
山桃の木が生っていて
その木に
ランドセルを掛けながら
赤紫の汁で
服を
ベ
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