ゆめ/はらだまさる
 


森が燃えて
灰になっちまった
空一面に森は舞い上がって
太陽はもう、
随分見ていない
海は汚れて
魚はねじれているし
母さんと妹は
知らない男達に
色んな穴をほじくられて殺された
縛られたままの親父は
拷問を受けながらそれを凝視させられて
すでに白痴だし、

おれ、もうやだ



(きっと)
きっと凄惨な光景が
広がっているはずの浜辺で
膝を抱え込んで、ぼくはひとり鳴いていた
見渡す限りの闇 ――― 世界を美しくするのは闇だ ―――
もう、逃げられるところなんて
この世界のどこにもない


恨みも悲しみも
憎しみも痛みも苦しみも失いそ
[次のページ]
戻る   Point(5)