夜離り声/なかがわひろか
 
一夜の頃
初めてあなたと離れた夜
一人の夜は何か不思議で
夜の音を聞いている間に
過ぎてしまいました

二夜の頃
あなたがいないことに慣れてしまった夜
何をしていいか分かりません
昨夜は初めての夜を
ただ感じていればよかった
今夜は何をすればいいのでしょう

考える間に夜は過ぎました

あなたは終(つひ)えてしまいました
嫌気が突き刺す毎日も
あなたと一緒に
終わってしまいました

三夜

悲しいと

寂しいと

初めて思ったのです

夜離れ(よがれ)の声が
響きます

わたしはあなたを愛していたのでしょう

わたしはあなたを

愛していました

今宵は夜が終わりません

こんな夜は
いつまでたっても
終わらないのです

朝が来れば
また明日の夜が来ます

そしてまた朝が来て
あなたのいない夜が来ます

わたしはもう一人でしょう

わたしはもう

一人です

(「夜離り声」)
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