百年前の朝/和泉蘆花
落ち着いた声で、「おはよう」と言われると
また夢の中へ入りそうだった
眠気を堪えて
僕は
「おはよう」と言いました
まるで、百年前から言い続けた言葉のように
朝
ピアノを流して
歌を浮かべています
共通するふたりの風は
花の香りを調べ
木々の間を潜り
虫たちの羽音の隙間を通って
寂しい人の下へ
吹く風になるのです
泣いて、笑って、また泣く人の下へ
「
風を集めよう
何処からかやってくる
寂しい風を
」
あなたの繊細な視線の行方には
何時も風がある
そこへ立ち止
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