涯て/及川三貴
 
近くにあった声はない
やがて離れてゆくだろう
測られてしまった熱の
裏側で泣いている

あなたの深海は
絵で書くことしか許されていない
響けと声に出して
膜張る潮に浸されながら
船の上から落とした緑色のたましい

指の軋みが最初の波紋奏でる
声さえ飲み込む追跡の歌
空に放って
降りてくる軌跡を待っている

鳥の歌
鳥の歌
真空を満たす
翼に乗った
鳥の歌

拒むような暗色に浸して
掬い上あげた手からこぼれる
消失点から渡ってくる風を
西側の影の中に溶かした
夜の夢から覚め
初めての言葉で簡単に朽ちた朝 
知りながら手を伸ばす英雄の悲劇 
口元で溶けた言葉 
払って踊り返して笑う

頭上では鳥の歌
軽々と ねえ あなた
幻想を捨てて 渡ってゆく
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