こせいをたいせつに/煙と工場
見えない手紙が届く
「私は個性的でありたいのです。誰よりもかっこよく一人の私としてありたいのです」
見えない手紙ならば
やぎも食うまい
しかし
やぎがいないので
返事が届くのか
心配だ
私はキッチンに立ち
包丁を握る
ごろんとなった
じゃがいもは
私の包丁さばきを
非難しているかのようだ
人参を切るときに
しくじって
指に傷をつける
手から滲む
赤い液体
私はすぐさま
拭いとる
私は机に座り
返事を書いた
そこには小さな返事
「私は包丁で手を切りました。そういうのが個性であると私は思います」
手紙を出
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