平和戦争/煙と工場
 
街は平和だ
何も起きない
長く続く日常
あまりにも
平和なので
皆が退屈そうな目をして
携帯電話の画面を見ている


あるとき
知り合いが死んだ
これは他殺でもなく自殺でもない
人々は平和だというのだから
これは淘汰だ
そのように
似非生物学者は言う


見えないところで
戦争は始まった
それはテレビにうつるような遠くではなく
顕微鏡でも見えない
この小さな世界で
起きている戦争
あまりにも小さすぎて見えないが故に
似非統計学者は
誤差の範囲と言う


街は平和だ
あまりにも平和だ
平和であるが
同時に戦争だ
ベンチは硬くて痛い


街は平和だ
きみがたとえ
見えないものと
戦い
傷つき
苦しみ
倒れたとしても
悲しいことに
この街は平和なのだ
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