柘榴の実/千月 話子
 
で 私は
それから二度と その赤い実を潰すことなく
池の周りで 遊ぶこともしなくなった・・・

今ではそれが 果物だと理解していても
肉の味がしないと 分かっても
割れた皮から見える 赤い実が
皮膚を裂いた 赤い肉のように思えてしまうのは
あの頃見た あの頃感じた
濃厚な記憶として 今でも残っているからだろう

 赤い魚 赤い実を食べた
 赤い魚 赤い汁の池で泳ぐ

私は柘榴を食べません きっと一生食べません 



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