ふゆのさかな ・1/銀猫
カーテンの裏に潜んだ結露を
指でなぞると
するすると雫は流れ落ちて
行き場のない小さな水溜まりは
冬の外気と人の温みのあいだで戸惑っている
わたしはうっすらと冷えた指先を持て余しながら
今日の空を見やる
こうしていると
薄い空気のなかで泳ぐさかなのようだ
薄青に底が抜けた水槽で
さかなは少しかなしい
憂欝や暗闇のほんとうの色を
まだ知ってはいないのだ
ただ、気配として感じる透明
匂いとして知る、不穏の怖れ
わたしは
こうして手足をひれにしながら
同じ場所ばかりを泳ぐのだろう
薄い青の水底が
迫って
透明が尽きるまで
[グループ]
戻る 編 削 Point(40)