ふゆのさかな ・1/銀猫
 
カーテンの裏に潜んだ結露を
指でなぞると
するすると雫は流れ落ちて
行き場のない小さな水溜まりは
冬の外気と人の温みのあいだで戸惑っている

わたしはうっすらと冷えた指先を持て余しながら
今日の空を見やる
こうしていると
薄い空気のなかで泳ぐさかなのようだ

薄青に底が抜けた水槽で
さかなは少しかなしい
憂欝や暗闇のほんとうの色を
まだ知ってはいないのだ

ただ、気配として感じる透明
匂いとして知る、不穏の怖れ

わたしは
こうして手足をひれにしながら
同じ場所ばかりを泳ぐのだろう


薄い青の水底が
迫って
透明が尽きるまで




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