春の雪/まどろむ海月
 
だろう
 事実を選びうる存在でもあるはずなのに



 たとえ知の奥義に触れても救われないさみしさがあり
 世界の目もくらむような美しさがわかっても
 ぬぐえないさみしさがあり



  なぜ?
  悲しみに心を痛ませながら
  悲しみの美しさに惹かれてしまうのは
  苦しみに心を裂かれながら
  苦しみの輝きに惹かれてしまうのは

  青空の向こう
  星々の輝きにも
  それはひそんでいるの?

  満ち足りていることの大きさの中にあるのではなく
  不足していることの大きさの中にあるの?



 憧れを持つ目にしか見えない真実
哀しみの日
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