ノート(木蓮)/木立 悟
 

何もない手に
白が降りて
名前を呼んだ
もくれんよ
もくれんよ


微笑む間もなく
雨は来て
空を伝い
午後を撒いた


灰の鱗
一人歩きの傘
午後の陽の行方を 耳で追い
かすかな声にたどりついた


得られぬことを知りながら
空へ 空へ のばされる手に
ひとつ またひとつ
ちから無きちからのかたちに満ちてゆく


もくれんよ
もくれんよ


戻る   Point(9)