枯れ立ちぬ/ねなぎ
何故にここにか
覚えない
この野において
ただ草のように
棒のように
立っているだけで
何かしらの
息吹が
在るべきことを
感じている
忘れ難き
彼の地の
誰ぞ思う
日が昇り
大気が流れ
やがて落ち着き
日が沈み
薄くやどる月の
鋭さに恐々とし
目を伏せている
ただ父の手の厚さや
弟の泣き声を思い
身を締め
地を踏み
歩くしかないのだと
背負うように
考えている
耳を欹て
声を潜め
息を殺せども
二十四気の
香りも知らず
道すがらに
思いを馳せる
故郷は
遠く霞み
帰れない日々を
眺めては
前を見る
聞こえ来るは
枯れた
風のみ
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