家族(時速50キロの)/霜天
 
何度も手を合わせた
何をそんなに祈ることがあったのか
考える深みは何処にも行けないままだろうけど

時速50キロで送られる私の家族の小旅行は
何を伝えることもなく
まだ見ぬ遠い景色よりは
いつか見た景色を目指して
巻き戻しをするように
一つひとつを、踏締めて


そのように、生きてみたいと願う
いつも変わらない景色の中や
いつまでも変わらない鼻歌のラインに沿うように


薄く閉めたカーテンの向こうで
口を開けて待っているもの
漏れてくる音程が何処までも明るければ
きっと
明日も巻き戻していける

時速、50キロの
私たちはそのように
いつまでも家族だった
戻る   Point(8)