家族(時速50キロの)/霜天
 
そのように、生きてみたいと願う
いつまでも二階より上の景色に臨めなくても
遠い車窓に同じ肩幅で揺れているだけだとしても


ノイズ混じりのカーラジオの表面に
透き通らない感情を混ぜている
会話はあちらこちらで反響し
誰に届いているかも分からなくなる
隣で眠る妹の、イヤホンから漏れてくる音程に
今日の感情の一片が、静かに侵攻を始めている

時速、50キロの
それが私たちにはぴったりだった


景色は流れるだけ流れると
気付かれないように巻き戻しを始めている
遠くへ行こう、と見ている空は大体同じようなもので
神社やお寺ばかりに立ち寄っては
何度も、何度も
何度
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